子宮内膜異形増殖症だって。

筋腫分娩から始まった闘病の全記録。

処置室の沈黙。

この日の先生は女医さん。

めっちゃ若くて綺麗。

入院の時にも何度か朝の回診で話したり
診察もしてもらった。

先生は『お待たせしました!』と笑顔。

わたしは作り笑顔は出来なかったけど
『よろしくお願いします。』と返した。

『紹介状見させてもらいました。
また筋腫分娩してるんだねー。
診察して出て来てるものを少し取って
組織の検査をしましょう。』

『あ、はい‥。』

いつものように
中待合室に戻り処置室に呼ばれるのを待つ。

言いたい事。
聞きたい事。

沢山あるのに何も言えず。

説明の時に絶対聞かなきゃ!!



看護師がわたしの受付番号を呼ぶ。

小さく返事をして処置室に入ると
名前と生年月日を確認して
あの椅子に座る準備。

『あの‥出血してるんですけど‥』
『大丈夫ですよー』

大量ではないが
まぁまぁ出血していたので
気にしながら椅子に座った。

椅子が動き出して先生が入ってくる。
『では内診からしますねー』
『はい』

『次、器具入りますよー力を抜いててくださーい』
『はい』

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』

沈黙。

紹介状を突きつける。

それから数日後。

渡された紹介状を持って
わたしは婦人科の待合室にいた。

この日もすごい人で
中待合室では座る場所がすぐに見当たらなかった。

出血は落ち着いていたけど
完璧に止まっている訳ではなかったので心配しながらも
ここは病院。

何かがあれば対処されるだけ。
嫌だけどやっぱり安心感はある。

聞きたい事は沢山あって。

言われた事も忘れないように
いつもボイスレコーダーに録音している。

1時間程待って診察室に呼ばれた。

ボイスレコーダーをセット。

診察室に入って
椅子に座って先生を見据えた。

見落とし‥なんじゃないの?

あまり役に立たないかもしれないけどと
一応止血剤を処方された。

‥止血剤ってはじめてもらったけど
なんだろうこの安心感。

家に戻っても
何も手につかない数時間を過ごす。

夜になって
やっとあちこちに連絡をしはじめる。

そろって『見落としぢゃないのか?』と。

そーだよね。
あたしだってそう思うもん‥。



この時のあたしは
こんな事しか考えられなかった。



でも
これはただの“再発”ではなかった。

行ったり来たり‥逆戻り。

すぐに診察室に呼ばれる。

気持ちを落ち着かせて椅子に座ったわたしに
先生が話し出す。

『前に救急で行った病院に紹介状を書いて
予約を取りますから逆戻りになるけど
そちらで治療を受けて下さいね』

ほらねー。
こうなると思った‥。
結果、あそこに戻る事になるんだ。

だったら最初から‥と思いながらも
先生の説明を聞く。

とにかく
この子宮から出て来ちゃってるモノが何なのか
しっかり調べなくちゃいけない。

前の通院日の時に
子宮内膜が厚くなってるけど
新しい筋腫は見付からなかったと
あっちの先生は言った。

それが見落としでないとしたら。
1年よりももっと短いスパンで巨大化したのか‥。



会計を済ませて車に戻った途端
わたしは怖くて泣きそうになった。

紛れもなくわたしの手元にある紹介状。
夢じゃない。



スマホを見ると彼や友達から着信やらLINEやら。

でもすぐに返事をする気持ちになれない。

取り敢えず車を走らせる。
家に帰って考えをまとめよう‥。

入院の準備もしなくちゃ‥。

再発。

問診票を書いて1時間程過ぎた。

わたしの番号がアナウンスで呼ばれる。
電光掲示板の番号を確認してドアをスライドさせた。

わたしを見るなり女医さんはにこっとした。
『お待たせしました』
看護師さんに椅子に座るよう促されて
座りながら
『よろしくお願いします』と挨拶した。

『今日はどうしました?』
筋腫分娩で緊急入院した事と
今までの経緯を簡単に説明して
『出血が止まらなくて、血の塊も出るんです』

先生は、取り敢えず診察しましょうと言った。
処置室に入ると久々に見たあの椅子。

出血があるので心配しながら椅子に座って準備完了。

先生が内診をはじめてすぐ
『あーーーーッ‥‥』
え?
『んーーーー?』
え?

先生早く何か言って‼
この間が怖い‼

『あのねー?筋腫分娩再発してるよ、これ』
『‥再発‥‥‥ですか』
『うん、もう出てきてる』
『‥‥‥‥。』
一気に不安になって言葉がうまく出てこない。

『これじゃー出血するよねー』
『‥‥。』
『じゃぁ診察室で説明するね』
『はい』



待合室に戻って座った。

再発って‥‥。

普通は筋腫って子宮の中や外にこぶのように出来るのに
何故わたしの場合は外に出て来ちゃうのか‥。

急激に大きくなって
重くなって
出てきてしまう。

体質‥‥‥なのかな。

子宮にとどまっていられない大きさだから
出てくるんだもん‥
前回産んだあの筋腫分娩から約1年で
またここまで育った事になる。

こんなスピードで
毎年のように筋腫分娩だなんて‥‥‥。

この先どうなるの?

覚悟を決めた待合室。

七夕から数日後。

わたしは婦人科にやってきた。

友達が通っているというこの病院は
最近、建物を新しくリニューアルした事もあり
駐車場も空きがないほど混み合っている。

もともと長く開業している産婦人科
女医さんがメインになってからは
さばさばした性格の先生で人気なのだと
友達から聞かされていた。

そんな事もあり
切羽詰まったわたしは
以前、救急でお世話になった大きな病院ではなく
何かあればすぐに駆けつけられる
個人病院を選ぶ事にした。

たらいまわし

よく問題になった言葉。

最近の救急指定の大きな総合病院は
紹介状を持っ行かなきゃ門前払い。

患者として登録があっても
時がある程度過ぎれば
パートの受付のおばちゃん達が
のらりくらりでマニュアル通りの答えを仕込まれて
緊急だから電話してるのに
予約がすぐに取れないだとか
先生が様子を見て駄目ならまた連絡してと言ってるとか
平気で毎回同じ台詞。

こっちは緊急だから電話してるんだけど。

診ないなら診ないなりに
近くの婦人科を受診しろとか言えばいいのに。

だからもう電話もしないと決めた。

いつからこんな世の中になったんだろ。
目とはなの先に大きな病院があっても
他の病院に行かなきゃいけない。

税金‥わたしも払ってますけどね。

そんなこんなで婦人科で受付を済ませて
空いた場所に腰かける。

問診票を書いて受付に出すと
『出血は今もありますか?』と。
『はい、大量ではないですが』と答えると
『具合が悪くなったり量が増えたりするようなら
声をかけてくださいね。』
ほっとする‥。

ちゃんと
わたしの症状を受付のお姉さんですら把握してくれる。

暖かい気持ちで腰を下ろして時間をやり過ごす。
友達が心配してLINEをくれるから暇ではなかった。

『やっぱり付き添おか?』
『大丈夫大丈夫!逃げないで診察してもらうからw』
『具合悪くなったら迎えに行くからね!!』
『ありがとー』

ほんとにありがとう。
みんなに心配ばかりかけて‥。

だけど
なぜか
今日はひとりで受診したかった。

何か言われた時
一緒にいる誰かに気を遣わせたくなかったから。

覚悟を決める時間が欲しかった。

決意。

駅構内のトイレは湿度を含んだ
それなりの暑さで長居する人は誰もいない。

わたしは動けないまま
暫く個室でその熱気とも戦っていた。

レバーもだいぶ出きった感じがしてきて
何とかなりそうに思えたので
取り敢えず1度外の風にあたりたかったから
ナプキンを2枚重ねて個室を出た。

そんなに歩かなくても外に出られるドアから数歩。
少し涼しくなってきた外気に
体にこもった熱を奪ってもらう。

植木の下にあるベンチに座って空を見上げた。
‥気持ちいい。

やはり病院に行こう。
近所の婦人科に行けばいい。

入院した病院じゃなくてもいいんだ。
もう数週間後の予約とか言ってる場合じゃない。

このままじゃ
また重度の貧血に苦しむ事になる。

いったんトイレに戻り
出血の状況を確認してバスの列に並んだ。