読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

子宮内膜異形増殖症だって。

筋腫分娩から始まった闘病の全記録。

手土産は笹かま。

チェックインを済ませて荷物を広げてみたものの
わたしは少しベットに横になった。

さすがに足元のおぼつかない雪道を
病み上がりのふたりが歩くには体力の消耗が激しかった。

キャリーケースもほとんど引く事もなく持ち歩く始末。
やっぱり疲れるなぁ。

それでも1時間程過ごしてやっと動き出す。

予約を入れてあるお店に行く前に
札幌駅の中をうろうろ。

それぞれお土産を買うのに忙しい。

お茶しながらも買い物を続けて約2時間。
『こんなもんにしとくかー』と言うことになりホテルに戻る。

フロントでダンボールを購入。
使わないものとこの大量の土産物を送りつける。
とは言え‥自分に‥なんだけど。
封はしないままで明日最終的に必要な物以外は
送った方が身軽でいい。

この雪道を重いままのキャリーケースを持ち歩くのはもう勘弁。

で、知り合いのお店の店長にと買ってきた笹かまを持って
楽しみにしていた、わたし達だけの特別メニュー
“店長プロデュース北海道グルメ三昧”を味わいにお店に向かう。

最寄り駅を降りればそびえ立つ札幌テレビ塔。
彼女が行ってみたいと言うのでついでに寄ってみる。

わたしはゆるキャラ好きだ。

なので北海道に来た時は必ずテレビ父さんグッツを買う。
彼女も何やら結構な量の買い物をしたようだ。

職場にばらまき用との事。
楽しそうで何より。

テレビ塔から見る夜景もカメラにおさめ
予約の時間ギリギリな感じでお店に入った。

店員さんに事情を話すと知っていたようで
『お待ちしてました‼店長を呼んで来ます‼』と
小走りで駆け出して行った。

わたし達はその間に靴を脱いで身なりを整えた。

『あー‼お待ちしてました‼北海道とお店にようこそ‼』
『店長‼お久しぶりです‼コレ‥みなさんでどうぞ』
『えー?笹かま‼大好きです‼』
『よかったー』
『 ありがとうございますー。
お部屋の準備も出来てます、こちらへどうぞー』

部屋はお洒落な個室だった。

『それでですねー。この時期にこんなに雪が降っちゃって
漁が出来なかったようで仕入れられたものが少ないんです。
だけどそれなりに準備はしてましたんで
絶対喜んでくれると思うものをお出ししますから‼』
『もちろん‼仕方ないですもん‼楽しみにして来たので
よろしくお願いします』

店長はにこっとして戻って行った。

こんなに悪条件だったんだもん。
それは仕方ない。

だけど、やっぱりプロだよね。

喜んでもらえるようにと考えてくれてる。
その気持ちが本当に嬉しい。

わたし達はお料理が運ばれて来るのを待った。

道産子ドライバーからの洗礼。

苫小牧に到着すると一面の銀世界。

おかげで交通機関も麻痺しまくりで
わたし達は札幌行きのバスの到着を待った。

先が思いやられたけど案外こんな事もありかと
B型同士のふたりは考えはじめている。

楽観的である。

特に急ぐ事もないし。

バスが到着してわたし達は後ろの席に並んで座る。

ここからがまた楽しかった。

道産子のプロのドライバーともなれば
雪道でも恐れ知らずなアクセルさばき。
わたし達は雪道のデコボコに体ごと浮き沈みする。

無重力体験。

うちらの体重‥そんなに軽くないはずなのにw

まるでジェットコースターだ。

札幌に近付くとますます渋滞。
なのでスピードは落ち着いた。

やはりこの方が安心。

札幌も大雪で
駅前に取ったビジネスホテルに取り敢えずチェックイン。

少し休んでから出かけることにした。

フェリーで迎える朝。

わたしが取った今日の部屋は特等室の和室タイプ。

この部屋はわたしの一番のお気に入りだ。

だからこそ、はじめてのフェリー旅で彼女にも
この部屋の窓から見る大海原を満喫して欲しかった。

この部屋は操舵室の真下部分に位置し
真正面に見渡す太平洋はキャプテンにでもなったかのような
何とも言えない特別感がある。

部屋に着いた時の彼女は
まさにわたしが想像していた通りのいいリアクションをくれた。

これで満足だ。
わたしの仕事は約8割りがた終わったようなものだ。

『すごーい‥』
『特等室だけに特等席でしょ?w』
『うん‼』
『和室だから足を伸ばしてゴロゴロ出来るしね』
『畳って落ち着くよね』

暫く船首で働くお兄さん達を見下ろしながら
夜の空と海を眺める。

船が動き出した。
これからいよいよ北海道。
明日の午後に到着予定だ。

いつも思うけど
空と海は見飽きる事がない。

それは夜でも昼でも。



『荷物の整理終わったら探検に行きたい‼』
『探検?では連れて行ってしんぜようw』

わたしの相棒の一眼と小さなバックを持って彼女と船内探検。

『外に出られるの?』
『出られるよ?でも明日の朝とかにしたら?』
『そうだね‼』

一通り散策してレストランへ向かってバイキング。
その後はディナーショーに。

『大浴場行ってこようかなー』と彼女が言うので
『転ばないようにね。あたしは部屋の風呂に入るよ』と
一旦部屋に戻って、彼女を見送る。

ひとりもやっぱりいい。
ひとりの時間は大切だ。

のんびり部屋のお風呂に浸かる。
方向音痴な彼女が無事戻ってくることを信じて。



お風呂から出ると、彼女はまだ戻って来ていなかった。

お財布を持ってお茶を買いに売店に向かう。
買い込んでロビーを横切ると後ろから彼女が戻ってきた。

『ねーねー、お風呂貸し切り状態だったよー‼』
『そうだったの?昼間なら見晴らしいいだろうになぁ』
『夜は夜で良かったよ‼』
『良かったね』

部屋に戻って、わたし達はガイドブックを見ながら
持参したお菓子を広げて行程を考えた。

取り敢えず、明日は苫小牧に着いてから
札幌までの移動もあり時間もかかるし
夜に知り合いのお店に行って
北海道グルメを満喫する事しか決めていない。

チェックインしたら夜までの間に駅ビル散策。
最初にだいたいのお土産物を物色して
ホテルで箱に詰めて自宅に送りつける戦法だ。

手持ちの荷物は手軽な方が断然いい。



そんなこんなで体力のないわたし達は程よく眠くなってきた。
取り敢えず眠ろう。

入院以来の『おやすみー』を言い合った。



フェリーで迎えた朝。
病院の起床時間並みに早起きなさっチン。
わたしも目が覚める。

ぐたぐたしながらもシャワーを浴びることに。
大浴場が気に入った彼女はそちらに行くと言うので
わたしは部屋のシャワーで済ませる。

朝ごはんは軽食コーナーでおにぎりとうどんのセット。
はぁー落ち着くw



昨日から楽しみにしてたデッキに出る。

デッキに出ると風が冷たい。
さすがに11月の風だった。

彼女がスマホで写真を撮りまくり
わたしも負けじと一眼とスマホで撮りまくり
ふたりでいても無言w

こんな空気感も心地よくて好き。



どんどん北海道に向かってる。

札幌はこの時期にしては62年振りとかの大雪らしい。

何でまたこんな時に‥。

彼女の夢、北海道へ。

BIGBANGのコンサートも終わり
その約1週間後、わたし達が北海道へ向かう日がきた。

駅前から出るフェリー行きのバスに乗る為に
わたし達はバスターミナルで待ち合わせた。

お互いを見付けると大きく手を振りあった。

『いよいよだねー』
『すごい楽しみだー』

手荷物は少なくしたつもりなのに
やっぱりスーツケースの中はそれなりの量になる。

バスに乗り込んでほっと一息。

やっぱり立ちっぱなしも疲れる。
余裕をもたなきゃやっぱり駄目だね。



フェリーターミナルが見えてきて
彼女は『あ‼あれに乗るのー?』と窓からフェリーを指差した。

『そーだよー』
本当に楽しみにしてたんだなぁーって分かる。



わたしはフェリーによくひとりで乗船する。

本当は寝台特急が好きで
寝台特急に乗る為だけに北海道によく行っていた。

寝台特急もどんどん本数が減って
廃線になったりして仕方なくフェリーで北海道に行ってみた。

これがまたはまってしまった。

フェリーに乗る度、よく爆弾低気圧に襲われるけど
それはそれでスリリングな体験が出来る。

やめられなくなった。

はじめてのフェリー旅の時
せっかくならいい部屋で行こうと
大概がひとりでも利用可能な特等室で往復していたけど
今回は帰りのみ特等室が取れなくて1等室で予約をしている。

しかもフェリーではじめてのふたり旅。

今回はガイドの役割もあるけど
無理しないでのんびり楽しむつもり。

運命のふたり。

北海道の日程を決める時、なぜか駄目な日がかぶった。

ふたりとも11月の週末にお互い東京に行く予定だ。

『同じ日に東京か?あたしはコンサートなんだー』
『え?あたしも‥』
『まじで⁉』
『因みにBIGBANGなんだけどね、あたしは』
『え⁉一緒ーーーッ‼』

何これー‼
ふたりで顔を見合わせて思わず大爆笑。

『病室で運命だと思ったけど‥まさかねーw』
『こりゃいよいよ本物だなw』

北海道に行く前に東京でも一緒らしい。

偶然なのか必然なのか。



コンサートの日を避けて11月末、わたし達は北海道へ出発する。

お互いが休職なだけに3泊4日の旅。



楽しみがいっぱい増えていく。

旅の計画。

沢山あるガイドブックの中から1冊を選んで購入。

旅行代理店で何種類かのパンフレットを貰って
駅前のベンチに座ってガイドブックとパンフレットを眺める。

さっチンは終始楽しそう。

やりたいことも見たいところも沢山ある。

だけどわたし達はこう見えて病み上がり。
わたしは貧血と当分と上手に付き合わないといけないし
彼女も全体的に体力がない。
体調にも波があるだろうし。

なのでふたりが旅をするのに決めたこと。

◎無理をしない。具合が悪い時は遠慮なく伝える。
◎ゆとりを持つ為に目的地は1日に2ヶ所位に絞る。
◎美味しいものを食べて楽しい思い出を沢山作る。

彼女が乗りたかったと言ったフェリーで北海道。
わたしはよく、ひとり旅でも行く北海道だけど
今回はふたり旅。

フォローし合いながら、きっと楽しい旅になる。

旅慣れない彼女からの一任で
宿やフェリー等の選定に取りかかる。

旅って計画を立ててる時がいちばん楽しい。

約束のスイーツパラダイス。

わたしが退院して数ヶ月が経ち、さっチンも無事退院した。

その間わたしはと言うと、仕事に復帰。
10月の中旬に宅建士の資格試験があるので
時間のロスもあったから
さすがに過去問に取り組んだけど
全国模試はギリギリ合格ラインを保てたのに
本試では合格ラインに4点届かず撃沈。

あと1年。
また勉強だ。
切り替えよう‼



そして9月のある日。

わたしとさっチンは駅前のビル中にある
スイーツパラダイスに繰り出した。

これは、わたしとさっチンが入院してた時に
約束した事のひとつ。

“退院したらスイーツを食べに行こう‼”

とは言え、わたしはまだ長時間歩くのはきついので
時々休んだりしながらも楽しめた。

帰り際、ふたりで駅ナカの本屋にふらっと入った。

『生きてるうちに旅行に行きたいなぁー』
『⁉』

生きてるうちに‥。

やっぱり‥そうなのかな。
“余命”とか‥。

怖くなった。

『京都にも行きたいしー、北海道にも行きたい‼』
『行った事ないのか?』
『うん、結婚して子供育ててたら行けなかったー』
『そーかー』
『嘛璃チャンが羨ましいよ、ひとりで旅行とか
あちこち行ったりしてさぁー』
『友達と行くこともあるケドひとりだと思い立ったらすぐでも行けるからね。さっチンも行ってみたら?』
『あたしは無理‼方向音痴だ‼』
『そりゃ駄目だなw』

そんな事を話ながらガイドブックを眺めてる。

『今、一番行きたいのはどこなの?』
さっチンに聞いてみた。

『うーん‥北海道で蟹かなぁー』
『‥行くか?連れてってあげるよ』
『ほんと⁉行く‼行くー‼』

すごく嬉しそうな彼女の笑顔は
わたしの心にじんわりと暖かい気持ちをくれた。